5つのレベル差をつなぐ代沢の家

POINT
ハイサイドライトやトップライトなど、様々な光で包まれた家
床のレベル差を利用した、コンパクトながら、縦と横に拡がりを感じる家
旗竿敷地を利用した、長い石畳みのアプローチを持つ家

下北沢の高台に建つ4人家族の家です。敷地は4方を住宅で囲まれた旗竿敷地で、敷地には80cmほどの段差がありました。 その段差を利用して、コンパクトながら変化に富んだ、拡がりを感じる生活空間を考えました。

旗竿の部分は、長い玄関へのアプローチです。このアプローチには古い屋敷で用いられていた厚い御影石を敷き詰めました。 この石畳を通り、扉を開けると、和室と繋がった視線が抜ける玄関ホールが迎えます。

階段は、建物の端から端まで連続し、3階までの階段吹抜けによって家族の気配が伝わります。2階のリビング・ダイニングでは壁によってリビングとダイニングを緩やかに別け、天井の高さの変化や、窓からの光の採り方を変えることで、それぞれ趣が異なる空間を楽しめます。

更に、主婦の家事動線を考慮した洗濯・物干しデッキや、隣地の緑を借景にしたデッキバルコニー、将来の変化に対応できる子供部屋へと、階段を介してそれぞれが関係性を持ちながら繋がっていきます。

旗竿敷地を利用した長いアプローチ

アプローチはできるだけ長くとる。それが、私が設計する建物の特徴の一つです。 外から内へ、いきなり入るのではなく、少し間(マ)を設ける。 そうすることで、気持ちが切り替わります。

 

旗竿敷地ではそのアプローチが長くとれるので、理想的。 その旗竿部分をいかに気持ち良く通れるようにしつらえるかが、この家のポイントでした。

 

歴史と重みを感じる御影石のアプローチ

古いお屋敷で用いられていた分厚い御影石が手に入りその御影石をアプローチにランダムに張り込みました。

コンクリートブロック塀に木を貼り、連続性を演出

隣地との境界ブロックにセランカンバツ材を縦格子状に貼り、玄関門までの連続性を作りました。

 

四周が住宅で囲まれた旗竿敷地では、このアプローチ部分部分が、唯一外部に視線が開けるところです。 出っ張った部分には中2階にデッキバルコニーを、その下には物干しスペースを設けました。 物干しスペースは正面からは壁によって見えません。

内部空間を広く感じるように、視線を遠くまで通す。

玄関扉を開けると、正面にカウンターが見え、その向こうに和室の床の間が見えます。 床の間には2階ダイニングからの光が下りてきます。玄関と和室は、カウンターをまたいで繋がっており、視線が奥の床の間まで抜けるため、玄関に入った時に拡がりを感じます。

カウンター収納から左に曲がると、4段上がったところが1階のフロアーレベル。もとの地形段差を利用しました。

階段は、まっすぐ建物の端まで使うことで、視線が遠くまで伸びていきます。

廊下の両サイドは家族の収納スペースで廊下は着替えのスペース

4段の階段を上がると右手に廊下があります。ここは廊下というよりも、家族の着替えのスペース。

4人家族の着替えがここに全て納められています。 外出先から帰宅したら、まずここで着替えて、身体を軽くして、2階に上がります。

玄関ホールとつながり、拡がりを感じる和室

和室は玄関まで視界が拡がります。 引き戸を引くことで、玄関とは区画されて、客間としても利用できます。

堀炬燵式カウンターテーブルのある書斎としての和室

カウンターは書斎のテーブル。掘り炬燵のように足を入れてパソコン仕事もできます。 玄関の扉までが部屋という感覚です。

2階との吹抜けから光を採り入れる床の間

和室の採光は、カウンター横のスリットと、床の間の上部から採ります。 床の間上部は、2階ダイニングの大きな窓に面していて、南からの光を1階まで降ろします。

簾戸で区切れる光採りの床の間

吹抜けの床の間には簾扉や板戸を引き出して、光や音を調整することができます。

ハイサイドライトとトップライトから光が注ぎ込む階段室

1階から2階、そして3階へと抜ける階段は、この家の吹抜け空間。 ハイサイドライトからは南の光を、トップライトからは天空の光を室内に採り込みます。

この階段は、視線が縦に通るダイナミックな空間。 横のつながりに縦の視線を加えることで、空間を更に広く感じる事ができます。

屋根の勾配がそのまま天井となるリビング

リビングとダイニングを壁でゆるやかに区切った2階

小さな住宅ではリビングとダイニングは一つのまとまりのある部屋とすることが多いのですが、この家ではあえてリビングとダイニングをゆるやかに分け、異なる雰囲気の空間にました。

リビングは北側斜線により、3.5mの高い斜め天井になっており、三角のハイサイドライトと階段上のトップライトから明るい光を十分に採り込みます。

リビングの勾配天井の角に設けたトップライト

ダイニング・キッチンは天井高さを抑え、同じフロアーで異なる空間を楽しめます。

造り付カウンターで囲まれた落着くダイニング

ハイカウンターの収納でキッチンの手元を隠したダイニング・キッチンシステムキッチンは、IKEAのキッチンを使用。

南、東面の窓からの光で明るいダイニング・キッチン

大きな木製サッシからは十分な光を採り入れます。 カウンターの裏は、吹抜けになっていて、1階の和室床の間に光を落とす仕掛けです。

主婦の作業スペースが納められた造り付収納

白い扉の中は、奥様の作業スペース。アイロン台を収納する事もでき、パソコン作業もここで。 急な来客時は、扉を閉めることで綺麗に見せることが可能です。

扉を開くと、デスクが現れます。

屋根の架かる洗濯・物干しデッキ

ダイニングから階段で4段ほど下がります。 階段右手にはトイレ。そして正面は、物干しデッキ。

物干しデッキには天井があり、正面の収納には洗濯機を納めました。 洗濯機の隣は、靴等を洗う水栓。 外部なのですが、ここで洗濯してすぐ干すという仕組みです。 南側から光が当たり、壁のルーバーで風を通すというもの。 丁度、玄関の上にあたります。

お隣さんの樹木を借景にしたデッキバルコニー

2階から3階に上がる途中のバルコニーここの床は、後日クライアント親子の日曜大工で、デッキが施工されました。 この外のバルコニーからは、富士山も見えます。

デッキバルコニーを3段のぼると子供部屋です。

子供部屋からはデッキバルコニーが見え、その先は隣家の借景です。

子供は2人ですが、将来2つに分けられるようにしています。

断面図1

断面図2

断面模型