フィンランド国民年金協会 天井輻射熱パネルのある明るい社員食堂

社員を大切にする会社は伸びる。それはそうだと思います。会社はそこで働く人そのものだから。で、働くスペースも大切ですが、一息つける場所はそれと同じぐらい大切です。会社で言いますと社員食堂なんかはその一つですよね。このフィンランド国民年金協会においても、設計者アルヴァ・アアルトはよく解っていらっしゃいます。大きく開かれた開口部からは緑豊かな中庭が見え、気持ちの良い季節では外の空気を吸って食事もできます。家具も暖かみのある優しいデザイン。気持ちが仕事モードから見事にリラックスモードに入れ替わります。 さて、その食堂に向かう階段 真鍮の手すりが見事です。両サイドの壁は白いタイル。昇るところから素材を替え、気持ちを切り替えます。 そして昇っていきます。階段廻りのデザインで大切なのは、階段そのものも勿論そうですが、天井です。大きな幅の階段で直通階段ですと、昇る人の目線は天井に注がれる。その天井のデザインで、人の気持ちは変わります。 で、この天井 白いパネルで構成されている面白いもの。実はこの天井パネルには温水が通るようになっていて、その温度で天井全体を温めるというもの。輻射暖房なんです。暖房の場合は、床暖房が普通ですが、この食堂では天井パネルを利用した暖房になっています。 食事をするスペースには半円形のタイルが壁に貼られ、陰影を感じる趣が意図されています。 そして大きな開口部からは明るい光が注ぎ込まれます。 中庭に面する窓際の席は、床が3段ほど高くなっていて、同じ大きな食堂のなかに、変化をもたらしています。 外観、吹き抜けホール、ライブラリー、そしてこの食堂とアルヴァ・アアルトが考え尽くしたデザインが今も生きる貴重な建築だと思いました。