志摩観光ホテルクラッシック 開設当時のホテルフロントからロビーへ上がる見事な階段空間 村野藤吾設計
伊勢志摩の志摩観光ホテルクラッシックは何度訪問しても楽しい。
あらためてじっくりと体感しますと、その時その時で新しい発見があります。
名建築とはそういうものです。ざっと見て解ったつもりになっても、また時間をかけて見てみると、そこにいろいろな技が見えてきます。
写真に撮ったら、そこで忘れますが、もう一度見直すか、あるいはスケッチで手を動かして手と頭で記憶するのがやはりベストかな。
志摩観光ホテルのルーツである建築家村野藤吾によって設計された鈴鹿の将校集会所。それを移築してホテルとして開業。その部分が今も「ザ・クラブ」として使われています。
その旧本館のエントランスから入り、2階へと上がる階段が気持ち良い。
手すりのデザインが素晴らしい。一番下はしっかりとした板の手すりが、階段上部に突き刺さります。
横から見える階段の段々部分は、縁は石。
一番下の階段と床がつながる部分には特に気持ちを込めてデザインがなされています。
階段の蹴上と踏面の寸法は、極めて登りやすい寸法で、蹴上は120mm、踏面は350mm
階段は一直線でその先にある空間の深さをなんとなく感じます。
階段の段々の横ラインが綺麗。
上って行くに従って、2階の奥行、高さも感じられます。気が付かないうちに何だか、ワクワクしてきます。
シンプルな白い箱から、木造の柱、梁が表しになったメインロビーへ。
そして、吹抜け空間が見えてきます。
一番上の段に近づくにつれて、階段右側の壁が削られ、手すりが見えて、視線が右方向にも開いていきます。
右の斜めの手すりのラインが、2階の床のラインに続いています。斜めの手すりはここで切るんです。
さりげなくこんな事をやってしまうのですよ。流石は、村野さんです。
正面だけの開口ではなく、右側の壁も開くことで、拡がりが全然違ってきます。上手いなー。
右は、ここだけ壁にタイルを貼った、ちょっと落ち着けるラウンジ。
この拡がり感でゲストは感動しますよね。右側からは、庭の広大な景色が見えます。
吹抜けの向こう側の手すりの見える3階部分は、なんと空間を横切るブリッジ。
ブリッジの向こうはもちろん吹抜け。
3階の天井には萩天井。美しい木造架構造が見えます。正面には3階に上がる階段がちょっとだけ顔を出しています。
正面とその奥の連続する列柱は丸柱
統一感のある手すり。手すり子や、手すり間の厚い板もシンプルですが、力強い。
右側に行きますと、さらに深みのある溜まりがあります。
そこから3階へと上げる階段が付きます。
手前階段部分の壁と2階床カーペットの見切りとして、手すりの一番下に見切り棒をいれています。これもさりげないけど上手いディテール
3階へと上がる階段
こちらは、1階から2階の部分とは変えて、階段ささら板をそのまま表しています。
したから上がってくる階段と直角に3階へ上がる階段。その取り合い部分も難しいですが、さりげない。
直線の階段を登り切って左に見える、深い奥行のあるホール。サミットのランチ会議で使われたスペースです。
左の列柱は、階段先端部分から奥に引っ込んでいます。手すり下の長い梁は化粧?
同じく階段上がって右側、庭園へと続く場所に設けられたタイルの壁があるラウンジスペースを見ます。
このラウンジスペースは、上下が開いた隔てで、何となく囲まれた落ち着ける場を創出しています。
完全な壁にしないで、上下をスリット状に開けてなんとなく繋がりを持たせ、空間の広がりを保っています。
良く見れば見るほど素晴らしい。また勉強しに行きます。