安井武雄 大阪ガスビルディング docomoの文化遺産モダニズム建築
大阪の大動脈御堂筋。その御堂筋には多くのモダニズム建築が建っていましたが、建替えが進みいまでは貴重な存在となっています。明治時期の建物は残すのに、なぜ優秀なモダニズム建築が次々と壊されていくのか。今の時代を生きる中年以上の人達がその青年期、働き盛りの時期にお世話になった建築物。そこには多くの人達のエネルギーが注ぎ込まれ、また想い出も一杯つまっています。年をとってその建築を見れば、また昔を想い出すし、それがゆえに愛着も湧く。壊されて、新しい建築がその前の建築を超えるものができればまあ納得しますが、なかなか超えらたと思うものはできない。とても悲しいことです。
さて、この大阪ガスビルディングは今もって現役バリバリ。その雄姿を御堂筋に堂々と見せてくれていました。
角をアールとし、低層部に黒い花崗岩。上部は白いタイルの外観です。
各階層毎に庇を跳ね出していまして、その庇の先端にも黒い石を廻すことで水平ラインを強調しています。
また、開口部と開口部の間にはアールをもつ柱型を付けることで縦方向もきちんと表現。なかなか凝ったデザインです。
陰影ができて深みを感じるファサード
1、2階を黒い花崗岩にすることで、ぐっと低層部が締まって見えます。
2階はガラスが外周部にまで廻っています。
ここはガスのショールームとしてガス器具や調理の教室などにも使われていました。
側面部分のアールの付いた出窓部分
建物の右半分は増築部分。増築部は戦後事務所後継者の佐野正一による設計。
窓の部分を新しくデザインしているが、全体としてとても統一感があり、しっくり納まっています。
御堂筋と反対側の道路から見た外観。増築部分を上手くデザインして、新しいものと古いものを違和感なくつなげている、増築のお手本のような外観ファサード
新旧まったく同じものではなく、その時代にあった新しいデザインをし、かつ古い建物にも合わせて全体をまとめる。これには優れたセンスを要します。
増築部低層部の納まり。黒い石壁の端部の納まりが美しい。
増築部コーナーのディテール
コーナー庇や、サッシの間の半丸の柱型も上手くアレンジ。
しかし、実に手の込んだ仕事をしています。やはりdocomo(近代建築に関する建物、敷地、資料化と保存の為の国際組織)に選ばれた名建築だと納得しました。