村野藤吾 輸出繊維会館 地下のグリルへと導く階段 曲面の壁 柔らかなカーブ天井
半地下の会議室、ホール階からさらに下へと降りる階段があります。飴色をした木ベニヤの壁にはグリルと表示がありました。下の階は昔は職員さんの食堂として使われていたそうです。格式高いサロン階から少し気持ちが緩むように意図したことがこのカーブの壁から感じられます。
数段降りて向きを変えますと、その先には前室のようなものが見えてきます。
壁が緩やかにカーブしているので、先が全て見えるわけではありませんが、それがかえって足を先に進めたいという気持ちにもつながります。天井は白い天井ですがこれまたカーテンのように垂れ下がるデザインを描いていて、直線のない柔らかさ、包まれた洞窟のような感じがしました。
左側の木の壁が下に近づくにつれて開いていくので、前室が拡がりをもって視界に入ってきます。ちゃんと人の心の動きを読み切ったデザインなのではないでしょうか。
階下に降りますと、きひんとした前室がしつらえてあります。ここでも、一つクッションがあって、気持ちが切り替わり、それから扉を開けて次の間に行く。ただの階段なんですが、やはり考え方一つでその階段自体が大きな意味を持つ。そんな事を思いました。
下からの見上げ。こちらはこちらで、食事の後さあ仕事だと思わせるような躍動感がある天井デザインのように見えます。
内部はシンプルなデザインなのですが、白い部屋ではなくて、しっかり落ち着きのある内装となっています。