村野藤吾 浪花組本社ビル 複雑で絵画的なファサード
もう一つ心斎橋にある村野さん設計の面白い建物があります。これも雑多な繁華街に面する建築なんですが、廻りの建物に比べても遜色ない奇抜なデザイン。でもこれほどいろいろな事をファサードで試みても、違和感が全くない街自体のパワーがあるんですね。
看板で埋め尽くされた街に現れる看板では無い本物の建築。遠くから見つけてもなんじゃこれはと思うほどインパクトがあります。
でっぱりや引っ込みがあり、いろいろな素材が使われています。ここは左官業の大手浪花組の本社ビル。左官屋さんは、いまでこそその作業量が建築工事の中でしめる割合が少なくなりましたが、昔は現場の主みたいな業で、職長さんは現場全体をまとめる世話役みたいな人が沢山おられました。工事の最初から仕上げまで左官業は必要な職種だったわけですから。
ということで、やはり左官職人さんの腕を存分に生かした建築を目指したのではないでしょうか。
でっぱりのある8角形の正面には瓦と漆喰を用いたなまこ壁風の仕上がり。鳥のくちばしのような6角形の部分は人造石によるレリーフ。開口部も凝っています。
それにしても多くの技術を要しています。
玄関廻りのアーチの門、スチールによる繊細な装飾
好きやねん大阪の石碑までありました。
2度と作れない、一品生産品の建築。まだまだその力は衰えておりません。