彫刻家安田侃の世界 アルテピアッツァ美唄(1) 体育館の中の彫刻
世界的彫刻家安田侃氏の生まれ故郷の北海道美唄。そこに廃校になった小学校の校舎を利用したギャラリーと彫刻公園が拡がっています。
炭鉱の町として栄えた美唄も、石炭から石油へと産業構造が変わると共に衰退し、人口も減り、学校も廃校となりました。そんな小学校の校舎の一部を
芸術文化振興施設として復活させたのは美唄市です。芸術広場(アルテピアッツア)と呼ばれる広大な敷地には安田侃氏の彫刻が鎮座し、校舎や体育館の中にも
彫刻が、もうここしかない!という場所に置かれています。1992年のオープンしたアルテピアッツア美唄は年を重ねるにつれ、敷地が拡大され、大理石のステージが設けられ、
校舎の改修と2階ギャラリーの開設、旧校舎の廃材を用いたカフェの新設が進むなど、今では7万平方メートルの敷地に70を超える彫刻が置かれる自然と校舎、彫刻が
一体となった公園になりました。安田侃氏のみならず、多くの市民の力によってここまでに成長を遂げたアルテピアッツア美唄。時間を忘れ、いつまでもそこに居たくなる
不思議な力を秘めた場所となっています。
丘の中腹に置かれた「妙夢」
大自然と一つになった彫刻。有機的な自然と人の手が加えられたランドスケープ。そしてくりぬきのある彫刻。
自然の中に人の手が加えられた大地と、安田侃氏による彫刻がおかれることで、見る人は彫刻とその後ろの自然、そして大きな空をあらためて認識することができます。
お互いが上手く影響しあう関係性を読み取ることができます。
建築も外部との関係性においてお互いを高めあうものでなくてはいけません。
こちらが、体育館を再生したアートスペース
入口で迎える小さな彫刻「真無」
内部です、
円筒形の屋根の旧体育館
そこに彫刻が、お互いに影響し、響きあいながら置かれます。
彫刻同志の関係性もありますが、、彫刻とその器である体育館の空間がお互いに見事な関係性を造りだしています。
手前にある白い彫刻が「回生」
見る向きによっていろいろな表情を見せてくれます。
イタリアで採掘される白い大理石ビアンコカラーラ。
クジラが泳いでいるようにも見えますし、まさに生命が宿っていると感じる作品
触ると、赤ちゃんの肌のようにスベスベで、優しい。心が癒される作品です。
「回生」は床からわずかに浮いています。重い石なのにその重さは感じない。上に向かって飛び立つようにも思えます。
「回生」の向こうにおかれる四角い彫刻は「無何有」。お互いが響きあう空気感のある配置
こちらはタマゴのような作品「めざめ」
外と内、内部空間と彫刻、それぞれを見ることで、他の要素に意味合いを感じられる。
たまご型の「めざめ」の向こうにあるのはブロンズで作られた「無何有Ⅰ」。
こちらは、「無何有Ⅱ」
ブロンズのふくらみをもつ四角いプレートの中に掘り込まれた直方体、逆ピラミッドとタマゴ、表面が流れていくような文様の先にあるしずく。
有機的な形と幾何学的な形を配置し、それぞれの相互作用を表現。
表に見える形とこの裏側にある空間、視覚的な世界と見えない精神的な世界をかたちとして表現した作品
こちらは、その連作でもある「無何有Ⅲ」
アートスペースの2階から見る