土浦亀城自邸 白い都市型モダニズム建築の代表作
目黒と恵比寿の真ん中ぐらいに位置するモダニズムの建築家土浦亀城の自邸。
今まで見に行こうと思いながら、ここに到ってしまいました。
完成は1935年。日本における初めての都市型モダニズム住宅。
建築家土浦亀城は、フランクロイドライトの元で学んだ、日本人弟子の一人。
ライト的なところは、内部空間のシークエンスに見られますが、外観は、白い四角のモダニズム建築そのものです。
ライトの所に、完成したこの自邸の写真を送ったところ、白いモダニズム建築が好きでなかったライトは、あまり感心しなかったというエピソードもあります。
敷地は通りから少し入り込んだ所にあり、角を曲がってすこし下がった傾斜の道の正面にこの白い建物は現れます。
手前右の庭を囲むカーブした壁が、優しく人を迎え入れます。
正面の白い壁には大きな開口部が二つと玄関ドア。いずれもスチールサッシによる細いフレームで軽快感があります。
細い庇が回り込む、横長の連窓開口部もモダン。
左の大きな開口部には跳ね出しのバルコニーが出、右の庭に面した大きな開口部にはこれまた大きな白い庇が付き、
四角い単調になりがちな立面に光の影を落とし、リズミカルで陰影のある立面に仕上げています。
当時の土浦亀城は都市の中に、出来る限りローコストによる都市型住宅をめざし、木造乾式工法により、見事にこの建物を創り上げています。
1935年というのが驚き。当時このような勾配屋根ではないフラットルーフに見えるデザインの住宅はほとんどなかったはず。
細いフレームのガラスが入った玄関ドアも素敵です。ウルトラモダンですね。
内部空間。お住まいだった当時の写真。
右奥の玄関を入って、半階上がったところにリビングとダイニングがあり、そこからまたステップで半階上がり、ステージが設けられ、
さらに上がって2階に到ります。この上下階を結ぶ階段により、いろいろな場面が現れ、豊かな空間になっています。
天井一杯の高さに設けられた窓からは天井を介して明るい光が室内にもたらされます。リビングの大きな開口部は当時としては驚きのサイズ。
細いスチールサッシが外部に入り、内部には両開きの木製網戸。
2階ステージから跳ね出しの外部バルコニーに出ることができます。連続する開口部の設け方が圧巻。
右奥の玄関側に跳ねだして設けられた造り付ソファーも効いていて、玄関部分とリビングを空間的につなぎながらこのソファーによって玄関から見たときの視線を遮り、玄関スペースを落ち着いたものに造り上げています。
現在は、だれもお住まいになっていませんが、この建築は遺産として必ず残して頂きたい傑作であります。