北九州市市立美術館(3) 方向を変えながら視点が様々に変化する中央階段 磯崎新
展示室は、2つのアルキャストキューブの中にあります。
そして、そのキューブにたどりつくまでの中央階段は、これぞ、階段の醍醐味を表現したものだと思いました。
まずは、エントランスホールの大空間
その上の方にアルキャストの展示室がドーンと並行して突き抜けていて、トップライトからの光が明るくホールを照らしています。
両側には2階のブリッジ回廊、そして正面には折り返しのある中央階段が象徴的に鎮座しています。
ブリッジ回廊は、上の展示室から吊られて、宙に浮いています。
中央階段。半階上がってから折り返してくるので、その折り返しの階段の裏側が正面に見えてきます。
両側から上がる階段と中央折り返し階段の裏の意匠を上手くつなげているのが、美しいカーブを描く大理石でできた手すり
半階上がった正面大きなガラスからは緑が見え、光が注ぎます。
両側の階段から半階あがります。ガラスの大開口があり、緑の庭の中に屋外彫刻、またこの半階あがった
休憩スペースにも現代彫刻が置かれています。階段すべてが大理石だとまた印象ががらりと変わりますが、ここは滑る機能を考慮されてかカーペット仕上げに今はなっています。
折り返す階段の大理石手すりのディテール
こちらも手すりディテール
半分上がって大きな踊り場があり、そこが空間として利用され、さらに次のステップへ。
ここから半階上がって2階のブリッジ回廊のレベル。さらに半階あがってホールにせり出した踊り場があり、折り返して3階へ。
ダイナミックな階段の構成です。
2階のレベル
2階の情報ラウンジから回廊ブリッジへ。
ここは回廊となっていて、レストランへの通路や、事務空間への通路が垂直方向に伸びていきます。
回廊ブリッジからエントランスホールを見たところ。
このレベルが、ブリッジとなって壁が無いことで、上のアルキャストの筒が強調されると共に、視界の拡がりが感じられます。
向こう側の壁もスリットになっていて、天井とつながっていませんよね。
抜け感が凄い
2階から3階への中間踊り場も相当エントランスホール側に飛び出していますが、ここは両側からやはり吊って支えています。
回廊から伸びる廊下
さらに階段を半階登り、そこからエントランスホールとガラス開口からの外の景色が見てとれます。
眼下に広がる街と緑が美しい。
丁度3階の筒のジョイント部分は、ガラス廊下になっていて、そこにも彫刻が置かれています。
ストックホルム美術館もこのような連続した通路の折り返しから、ガラスの展示廊下を見ることができましたが、
この北九州市美術館は、1974年の竣工。いかにこの建築が優れているか解ります。
再び折り返して3階フロアーに向かいます。
ここから見ると、1階から半階上がった中庭が見える休憩ホール、さらに半階あがった2階レベル、そしてこの2階と3階の間の大きな踊り場の構成が良く解ります。
ここでも外に抜ける感じが良いですよね。
3階フロアーから階段を介してエントランスホールを見ます。
ほんとうにドラマチックな階段を含めたエントランスホールです。
磯崎さんは{建築の修辞」で、良く似た空間構成としてバルトロメオ・ビアンコの「パラッツオ・ウニベルシタ」を挙げておられます。
こちらも見に行きたい。