富田屋旅館(現湯豆腐嵯峨野)(3) 奥行と拡がりを感じる玄関ホール 村野藤吾
これぞ村野さんの設計とうなってしまった富田屋(現湯豆腐嵯峨野)の玄関ホール
まず、玄関の引き戸を開けると、このような空間が現れます。
正面に蹲(つくばい)
L字に土間が曲がっていきます。
その蹲を囲うように付けられた腰部分が移動する目隠し障子
曲がった土間には天井からつるされたお花
L字型に曲がる土間とその右に展開する畳の上がり。
うーん。感嘆。
振り返りますと玄関と左に畳の上がりがあります。
畳の上がり。天井から下げられた低いペンダント照明
竹の柱を壁に建て、そこにお面を添えることで、ここが床の間であることを示します。
壁は直角ではなくてわずかに左に向かって開いていきます。内路地方向に放たれた低い障子窓も効いています。
畳の上がりから廊下へと進むところ
ここにも一段段差が付きます。左にある細い材で造られた横格子の衝立も領域を分ける装置
廊下の天井は網代天井こちら側の玄関ホールは板張り。
この宙に浮く障子の桟は、向こう側にある廊下を通る人の目線を隠す高さ
これがあることで、廊下を含めた玄関ホールが更に奥行きのある空間へと変貌します。
障子を閉めるとこのような感じ。
下の部分が開いているので、目線が床の奥まで届くため、閉ざされていても圧迫感や小さな感じを受けません。
閉鎖感がほしい場合はこのように両側の障子を閉めればいいですよね。
開放されているのとはまた違う空間ができあがります。