駒井家住宅(4) 西日が入ると黄金色の空間になる階段室
階段は、ただ上下をつなぐという機能だけではなく、1階と2階の違う用途をつなぎ、気分を変え、空気の流れを作り、一つの家の中に吹き抜けというダイナミックな空間の質の変化をもたらす重要な建築要素です。
さて、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計した駒井家住宅の階段。
この階段もいろいろな要素が込められています。
まずは、大きなアーチの開口部
この大きな開口部は、西向きの壁に設けられ、黄色い色ガラスがはめ込まれています。
この黄色いガラスは、設計したウィリアム・メレル・ヴォーリズが好んで使ったガラスで、沢山の学校建築、チャペルにも使用されています。
夕方西日が入ってくると、黄色いガラスを通過した光は、白い壁に反射してこの階段室を黄金のスペースへと昇華させます。
次に階段の蹴上ですが、今の住宅では180~200mmぐらいの蹴上が多い中、170mm強と低く、とても緩やかで上りやすい。
これは、和服を着た静江夫人を考慮したと言われますが、ヴォーリズの設計する住宅の階段は、蹴上が小さく、施主に配慮したものがほとんどだそうです。
そしてこの階段の滑らかな手すり。
大工さんの腕の見せ所
この家にはほとんど装飾らしい装飾はありませんが、唯一この階段手摺には、デザインがなされた跡がしっかりと残ります。
2階廊下から見下げた階段
1階廊下から見る階段室。黄色く輝く空間が創造できますよね。
回り階段なのですが、その小口が美しくデザインされているのが解ります。
竣工当時の写真。ほとんど変わっていません。
廊下には美しいシャンデリア調のペンダント照明が吊られています。
1階の平面図を見ますと、階段と壁との間に隙間を設けることで、アーチ開口部から光が綺麗に廊下に注ぎ込まれるのだなあと理解ができます。
1階平面図
収納は、あちらこちらに設けられ、無駄なスペースは、どこにも無いという設計ですが、この1階廊下の階段を上がる前の部分にも小さな引出が設けられていました。
2階の廊下。正面の背の低い扉は、倉庫の扉です。
天井を見ると、隙間があります。実はこれは、天井が階段になっていて、機械仕掛け。天井から階段が折れてきて、天井裏倉庫に入ることができます。
今の住宅設計でも重宝させる屋根裏収納をもうこの時代にはやっていたのですね。恐れ入りました。
こちらは、その天井の階段を下ろしてくるための機械装置