旧井上房一郎邸

群馬県高崎市にある旧井上房一郎邸を見学しました。 井上房一郎は、群馬交響楽団、県立美術館の設立、群馬音楽センターの建設等群馬の文化向上に欠かせない人ですが、その自宅がレーモンドスタイルの建築として今も残されています。レーモンドの事務所兼自宅の図面の提供を受け、井上工業の大工が建設したもので、レーモンドの自宅が無い今となっては、その空間・材料・しつらえを学べる貴重な建物です。 リビングは、中央に暖炉を置き、足場丸太の2つ割の梁が柱を挟み込んだ構造を内部にまで見せ、開口部と柱ラインをずらす「芯はずし」を行うことで大きく外部に開放された空間です。 南の連続的な開口は、深い庇により夏の光を遮り、北側のハイサイドに放たれた開口部からは、均一的な光を採り入れています。壁の周辺には造り付の家具が重心低く配置され、壁のベニヤ仕上げとひと繋がりになり、とても落着いたしつらえです。 屋根の一部をガラス貼りとしたパティオは、レーモンドの自宅では、よく食事がなされていたようです。外部と内部との密接な繋がりは、日本建築の伝統ですが、このパティオは、構造的にもデザイン的にも優れた領域で、とても気持ちの良い場を提供しています。