坂倉準三 神奈川県立近代美術館鎌倉館 1階の中庭を介した自由な平面
外部と内部を緩くつなげるという手法はいつも私が設計する時に考えることです。外部と内部の中間領域とでも言うのでしょうか。大きな平面を持つ建物には中庭という要素を加えることで、光や風、視界の拡がりなどをその建物にもたらすことができます。坂倉準三が設計した神奈川県近代美術館も、大きな中庭があり、その中庭を中心にして建物が構成されています。
2階の第一展示室と第展示室を繋ぐ開放廊下から中庭をみた写真。2つの足跡は、恩師ルコルビジェが訪問した際、坂倉準三の説明を受けた場所とされています。
2階の解放廊下から外部階段で下りていきます。
階段手すりの造形が見事
中庭を中心にして、半外部の展示空間が拡がります。
ここには彫刻が設置されていて、大谷石の壁で区切られた展示空間を歩いて回ります。
その壁と壁の間から池が見え、その向こうの木々が見え隠れして、自然の中で、美術品を鑑賞するような感じ。まさに中間領域的な展示空間です。
美術館のエントランスについてですが、この鎌倉近代美術館の1階は、実はどこからも入れるようにいくつかの出入り口が設計当初は考えられていました。今、金沢21世紀美術館はそのような街に開いた美術館として建っていますが、いまから60年以上も前からそんなフリーエントランスを考えた人がいたんですね。主階の展示室を柱で2階に持ち上げ、1階はいくつかの壁で構成された市民に開かれた展示空間とする。改めて、その開放感とコンセプトのすばらしさを体感できました。
中庭に面する大谷石の壁には開口が設けられ、重い石の壁から光が通り抜けます。
鉄骨と大谷石の壁との取り合い部分。
この建物は美術館という機能がなくても、十分魅力的であり、モダニズムを後世に伝える貴重な建築であることは間違いありません。