永田祐三 長瀬産業大阪本社ビル 石やスチールの繊細なディテール
長瀬産業旧館のデザイン要素を現代風にアレンジしながらも全体として統一感を持たせる。要素を細分化してひとつひとつを現代風に作り直すという設計は大変ではありますが、やりがいのある仕事でもあります。街のヒューマンレベルに対しては縦長の開口部が用いられています。本館外観は大きな壁で造られた重厚感ある建物なんですが、シャープさが感じられます。そこには隠されたきめ細やかなディテールが存在しました。
旧館のエントランス廻り。ドーンとした重厚感のある建物
本館の開口部。旧館の低層部を咀嚼したデザインです。大きなタイル壁面に開けられた縦長開口部。
よく見ますと、開口部の水切りの石のディテールが丸みを持たせ、水処理という技術的問題も処理しながら非常に美しくまとめてあります。またスチールの格子デザインは極めて繊細なデザイン。機能を十分踏まえての優れた設計です。
窓の石枠が地面と接する部分でも柱は中央が少しへこんだデザインで単調性を無くし影を生み、ボリューム感を出しています。壁はしっかり大地に着き、開口部は開口部としてデザインする。開口部下の地面と接する部分は少し浮いていてここでも地面と建物の間に影ができるようなディテール。力がこもったデザインです。。
石のアーチの枠取りも実に綺麗です。
永田さんは竹中独立後、和歌山のホテル川久など、職人の手の痕跡がにじみ出るような建築をいくつも設計されてますが、長瀬産業本社ビルもそんな設計者の想いや好みが今でも残る秀作だと感じました。