グンナール・アスプルンド 森の火葬場 魂を森へと還す大礼拝堂
礼拝堂は、亡くなった人と家族の最後の別れの場ですが、グンナール・アスプルンドが設計した森の火葬場の礼拝堂は、その悲しみを優しく包み込むような空間です。
角のない、人を包み込むような内部空間にはいろいろな工夫がなされていました。
まず床は、中央の棺に向かって外から内部へと緩やかに下がっていきます。自ずと、亡くなった人へと向かい合う感覚が生まれます。
棺を囲む丸い柱は、梁を支え、その梁は、真ん中に円を描くように、外へと伸びていきます。
梁は、外部との境の壁で止まりますが、それは外の半外部空間のロッジアと連続する暗示。
亡くなった魂は、森に帰るとスウェーデンでは考えられているそうです。
その森へと向かう方向性を表しているように思えます。
正面に描かれた絵画もそんな霊が森へと帰える様を表しています。
優しい光が大聖堂を包み込みます。
正面
棺に向かい、緩やかに下る床
天井の梁は、内部で完結しないで外部との境の壁にぶつかります。
下の開口部からは障子からの光のような柔らかい光が入ります。
この障子のような開口部は、葬儀が終われば、全て床下にスライドしながらしまうことができ、内部と外部は、完全に繋がります。
亡くなった人の魂は、この開口部から森へと向かいます。そして別れた家族は、外のロッジアの中にある、未来を示す像に視線が写り、天へと昇る魂を実態として感じることができるのです。
広大な緑をバックにしたロッジアとその中に開けられたパティオの部分にある天空を目指す像。
もう一度内部に戻ります。
真ん中に置かれた棺に向かって右側の一番近い席が親族の席ですが、その床面だけに、四角で囲んだデザインがされています。
これは、悲しみで目が床を向いた時に感じられるように、他の部分とは変えてデザインされたもの。
そして、その目を上げますと、棺の向こう側の壁に描かれた、花が咲き家族が楽しむ風景が目に飛び込んできます。
床には、丸い金物が埋め込んであります。
これは、引っ張り上げることで、ろうそく台になります。
棺や家族を囲い込むようにろうそく台は、配置されており、火をともすことで人々を優しく包み込みます。
グンナール・アスプルンドは、若くして子供を亡くしており、何よりも残った家族の悲しみが理解できる人でした。そして、このような礼拝堂ができたのです。
アスプルンドの設計した森の墓地は、ユネスコの世界遺産にも登録されました。