リチャード・ノイトラの住宅遺産
六本木にある国際文化会館に講演会を聞きにいきました。
20世紀アメリカのモダニズムをリードした建築家「リチャード・ノイトラ」の息子さんレイモンド・ノイトラさんの講演。
ノイトラの作品と、設計した住宅の保存に関してでした。
日本においては、住宅は特にですが、住む人の年代が変わると、相続の問題があり、ほとんどの大きな家は解体されて更地になります。
近代建築の歴史を語る上で重要な家もどうしても後継者が現れず、解体されるのがとても残念であり、文化的損失でもありますが、
今の税金制度ではこれからもどんどん無くなっていくと思います。そういう中で、社団法人住宅遺産トラストさんは出来うる限り後継者を探すべく、活動されています。
今回は、その住宅遺産トラストの主催。
オーストリア出身のリチャードノイトラは、モダニズム先駆者でもあるアドルフ・ロースのもとで建築を学んだ後、アメリカに渡り、フランクロイドライトのもとで働きます。
当時のライトはプレーリーハウスを多く手掛けていた時期。そのライトから多くを学ぶのですが、特に影響を受けたのは、自然とのつながりでした。
ライト自身も日本建築の内と外の連続する空間から多大な影響を受けていて、それを継ぐような形になったそうです。
ノイトラは、引き戸を用いました。天井まで一杯の大きなガラス引き戸を製作し、引き込むことで外と内がつながる。そのような開放的な家を沢山設計してます。
まだ1920年代で、すでに今我々がやっていることを、実現しています。しかもそのスチールサッシの枠がきわめて細く、シャープ。
これはノイトラの代表的住宅でもあるカウフマン邸
水平の床とスラブで挟まれた開口部には、引き戸が入りますが、その存在感が無いぐらいで外のプールや庭と部屋が気持ちよくつながっていきます。
エントランスからリビングに至る動線。流れるような視界の拡がり。内部と外部が入り混じる配置計画。水平に伸びる形態。たしかにライトのプランに似ています。
ノイトラは、工業化が進んだ時代と上手くリンクしながら、軽快でしかもコスト的にもリーゾナブルな建築を沢山世に送り出しました。
アメリカでもこのような歴史的に価値があり、これから建築を学ぶ学生にとっても重要な建物はできうるかぎり残す努力がなされています。
セミナールームとしての活用、宿泊施設やオフィスとして、さらに新しい住人を探すなど、いろいろなアイデアを出すことで、日本でも何とか名建築を残していきたいですね。