沖縄の風土に溶け込んだ名護市庁舎 シーサーが守る建築
沖縄の名護市の市庁舎。公開コンペで1等をとったのは、象設計集団とアトリエ・モビル。その市庁舎の建物は、ここ沖縄の風土や
街並み、歴史を踏まえた優れた建築です。
設計コンセプトは、沖縄の街や風土に溶け込み庁舎と街が連続する建築、風を感じコミュニティーの場にもなるアサギ(神が降りてきて人々と交信する場所)からヒントを得たアサギテラスを散りばめた建築、そして海を睨む表情です。
沖縄の建築は、ほとんどが鉄筋コンクリート。その中にアメリカからきた風を通す花ブロックが上手くはめ込まれ、素朴ながらも沖縄らしい表情を見せてくれます。あと沖縄を感じるのは、琉球瓦の昔ながらの木造建築、屋根の上や入口に鎮座する建物を守る神シーサー、温暖な気候による熱帯の植物、そして各所に残る石造のお城。これらのイメージを見事に一つの建物に具現化させています。
こちらは、海側とは反対の街に面するファサード。
いくつもの屋根が重なった外観は、市庁舎という大きなボリュームを分節し、ヒューマンスケールとして威圧感なく捉えることができます。
芝生と地域の植栽の向こうに見える、生き物のような建築
こちらは、海側のファサード。
建物には56の集落の56人の職人さんによる大きなシーサーが、海を睨んで建物のあちこちに鎮座しています。そして、この庁舎の真ん中には各階をつなぐスロープが貫通。このスロープは、郵便局のバイクも走りますが、職員がゆっくりと景色を見ながら話をして上下する姿が見えます。
この歩きながら議論や会話をすることが、今の慌ただしい時代の人にはとても大切だなーと感じました。これからも新しい建築にも挿入させたいスロープという建築部位です。
行って帰って、海が見えたり、シーサーを眺めたり、大きな空や雲を感じたり。頭が活性化しますよ。
シーサーは、どれも個性的で魅力的
ひとつひとつに職人さんの想いが入ります。
風があちらこちらから抜けていくように、建物は計画されています。