アルヴァ・アアルトのアトリエ 中庭を囲むアトリエ 優しい木立を連想させる曲面壁を持つ天井の高いアトリエ
そして奥に行きますと、ドーンと視界が開けます。見入ってしまう高質な空間登場。高い天井、大きく外に開かれた開口部、曲面の壁とその壁に注ぎこむ明るい光のシルエット、沢山のペンダント照明の架かった彫刻的な壁、斜めに切れ込んだ階段。ウーン見るところ満載のアトリエです。
右の壁がカーブしているがゆえに奥行感と拡がりが感じられます。
そして右側にはカーブの壁に設けられた大きな窓。
その窓からは、芝生の中庭が見えます。壁と建物に囲まれていますが、丁度すり鉢状の形をして、奥に行くほど地面が段々に下がっていきます。
ここは、自然を感じる中庭であり、古代の屋外円形劇場にも見えます。
内部を2,3歩進みますと、右奥の高い曲面壁に、ハイサイドライトからの光が当たる劇的空間が現れます。
開口部の高さや大きさは方位、季節を十分考慮され、採りこまれた光は曲面壁を時と共に変化しながら明るく照らし出します。
この曲面の壁は、森の木立を連想させます。
柔らかい葉っぱのイメージと垂直に立つ白樺の幹
このアトリエをはじめヘルシンキの廻りの森には白樺が連立して生えていますが、そんな景色と繋がるような美しい壁です。まさにヘルシンキにあるアアルト独自の空間であると言えます。
壁はただの曲面ではなく、断熱材を入れ込んだクロスのような柔らかい素材
断熱と吸音を兼ね備えています。
曲面壁の断面スケッチ
そして左奥のコーナーに目をやりますと、ここにはアアルト設計のいろいろな形をしたペンダント照明がオブジェのようにぶら下がっています。
いろいろな形をしていますが、こうしてまとめて見ても違和感がありません。同じ設計者によるデザインなので、その根底に流れる人の優しさが皆現れ、全体として統一感があります。
多くの照明もデザインしたアアルトですが、こうして検討しながら、ひとつひとつその建築、その場に合ったデザインを模索していったわけです。
オブジェのような装置の壁面を上から照らすトップライト。沢山のスタディーの中から選ばれた有機的な形状。この時間帯は壁に光は当たっていませんが、日と時間によってこの壁に美しいシルエットが浮かぶのでしょうね。
そして足元の流れるような階段
柔らかい曲線が木の素材を合いまったデザイン階段
木のフローリングを用いなくても、階段の段鼻と巾木に木を用いることで、固い素材の印象から柔らかい優しい素材の印象に変わります。もう一度そのような目でこのアトリエを見渡してみますと、木を使っている部分はほんの少しにもかかわらず、頭の中には木の素材感が残り、木の空間のようなイメージができていました。なかなか勉強になります。
この階段からアトリエの入り口を見返した写真
アアルトが写るパネル写真
このアトリエは施主へのプレゼの場をはじめ、新しい試みの試作や検討、実験の場、静かに建築を考える場や会議の場として使われた建物の肝なんです。