ル・トロネ修道院(2)
このシトー派の修道院は、1160年ごろに工事が始まり、1175年ごろに主要部が完成し、1176年に修道士の移住が行われたそうです。今から835年も前の建物ということになります。この建築が作られた時代には怪奇で装飾的なロマネスク彫刻が数多く生産され、多くの図像が散りばめられた建築が増える中、一切の装飾性を断ち切り、粗い石だけを用いて自らの労働奉仕により作りあげた極限の空間がこの修道院なのです。
南側壁面と塔
大雑把に削りだされた外壁の質素な美をブイヨンは求めました。
粗面に反射した光が美しい。
回廊の壁
西側正面の壁
最小限の素材を用い、一切の装飾的遊びを排除しながら神を感じることができる最大限の効果を突き詰めた結果、光と音の響く空間ができあがったのです。
強い意志とぶれないコンセプトがあれば、ここまでの建物を作り上げることができるのです。