東京女子大学旧体育館(1)

東京女子大学の旧体育館で行われた講習会に参加しました。A・レーモンドの設計で築85年の建築です。今でも十分に機能していますが、解体の危機に瀕しています。東京女子大キャンパスは、バージニア大学のキャンパス配置を手本として計画されたそうです。正門を入り図書館を中心とした建物群で構成される学びのゾーン、学生寮を中心とした生活のゾーン、そして旧体育館を中心とした社交のゾーンから成り、2つの軸線をもつ明快なキャンパスです。既に学生寮は取り壊されてしまいました。建設された当時は、まだ女子で大学へ行ける人は少なく、地方から出てきた学生は皆寮生活でした。 夜遅くなって帰ってくる学生にとって、図書館とこの体育館の光、そして寮の中心にそびえていた塔の光が、安心と安全を提供したそうです。 旧体育館は、日本で最初の鉄筋コンクリート造の体育館で、両側に壁量の多いクラブ室等の2階建ての建屋を持ちその間に挟まれたように平屋で構成されています。これは、耐震性を考慮した結果の形態だそうです。 この建物には体育館という機能だけではなく、暖炉を持つクラブルームやレセプションルームがあり、ステージは、演劇ができる舞台となることで、学生や教師の社交の場としての役割もありました。ロミエとジュリエットが演じられるように、2階部分にも窓があり、階段を通して立体的・パースぺクティブに正面舞台が構成されています。今から考えても非常に精神的に豊かさを提供してくれる建物です。 体育館の床は、600mm廻り廊下、ステージから低くなり2階の外部にも両ウイングを繋ぐ外部テラスが走っています。 光は、南の開口部から十分に注がれ、夏は風通しが良く、又冬も暖かい快適な空間だそうです。 この建物が85年も前の建物であることは、驚きと同時に設計者の熱意と苦労に脱帽させられます。 建築の価値を理解していただき、是非とも残してもらいたい建物です。 結局、建築は、文章や写真では理解不可能で、あくまでもその空間に身を置き自分の五感を通して体感することで初めて理解できるものだと思うからです。壊してしまえば、2度と同じ空間は再現できません。