東山温泉向瀧 庭に開かれた廊下 素敵な客室までのアプローチ
建築を考える時、敷地に入ってから建物までのアプローチ、そして玄関から主室までの移動する空間が私にとっては非常に重要なファクターです。このアプローチが建物の良し悪しを決めるとも思っています。外から中に入るその結界が緩やかにスムーズに繋がるのか、それともしっかり遮断された結界で全く違う世界をつくりあげるのか。安心してくつろげる空間までの序曲と言いますか、食事にたとえると前菜の部分、ここが上手く解けると、あとはスムーズに設計できていくのです。敷地や建物規模が小さい場合も、この導入部分を考えるのに一番時間をかけます。
さて、向瀧。
大きな間口の玄関から入り、部屋まで通されるのですが、その廊下が楽しい。
先が見えたり隠れたり。90度に曲がったり、きれいな庭が見えたり。
床も窓も全てが清掃が行き届き、磨き上げられてぴかぴか。2年前と同じ美しさ
空気がとても透き通っていて気持ち良いんです。
途中には立体的な中庭を見上げる腰かけがあり、お風呂あがりは、ここで佇んで庭をボケーと眺めたりおしゃべりしたり。建物の中にある道としての廊下。
しばらく長い廊下を歩くと突き当りに廻り階段。先が見えないのが良い。
一枚板のぴかぴか階段。従業員の皆がこの建物をいかに大切にしていることか。
最近の住宅の階段は、集成材の階段ですが、やはり1枚板は迫力あります。
真っ直ぐのぼって振り返ると次の階段が見えてきます。このワクワク感一杯の動線はどうでしょう。先が見えない期待感とでも言うのでしょうか。昇っていくときに人の気持ちは高ぶります。ここまできたらもう気持ちは外界と離れ、遊びの世界に入っています。立体的な階段と空間構成はその気持ちの変化を見事に捉えたものでした。
更に昇ったところに今回の客室がありました。
お風呂は1階なので、この階段は何度か上がり降りしましたが、それは楽しいものでした。きっと子供はもっと喜ぶな!