銀座ミキモトビル 大人の銀座を表現してきた建物が消える寂しさ
銀座通りで和光を除いて最も好きな現代建築であるミキモト本店
黒い石の壁がドーンと立ち上がり、L字型の開口部からは煌びやかな世界が街にさりげなく語りかけています。コーナー部分の広間的空地にはいつも楽しい展示がなされ、クリスマスのこのシーズンには大きなツリーが飾られ、いつものように季節を感じさせてくれました。
何と言いましても、この地価が一番高い銀座のビルで、通りに対して大きな開口部を設けず、あえて落ち着きのある黒い石の壁にしているところが凄い。そして空地を設けているのも凄い。
大人の建築と言えます。
この銀座を代表するような建築が建替えられるそうです。凄い勢いで、姿を消し、立て替わる銀座の建築物。1丁目の菊竹さん設計のホテル西洋も無くなり、銀座通りではありませんが、白井晟一の親和銀行は無くなり、いまこうして好きなミキモトが無くなります。
今新しく建つ建物よりも格段に建築的レベルが高い建物の焼失は未来の子供、これから建築家を目指す若い人達にとっても悲劇としか言いようがありません。
人は都市に対して想い出が沢山あります。若い時に例えばミキモトに入り指輪を見たりしたねーとか、あのときはどうだったねーとか。想い出の舞台としても建築はとても精神的なよりどころの一つなんです。
パリでもミラノでも名だたる都市には古い建築もあり、それに混じりながら新しい建築もあり、それらが上手く溶け合って楽しく魅力的で活動的な都市となっています。都市に文化が育つと思いますが。建築を無視した経済至上主義は、心のどこかに穴を空けますな。
シンプルで重厚感があるからこそ、こんな煌びやかな浮ついた銀座の街には必要な建物だと思います。
このゆとりの精神を次に生まれ変わる建築にも期待したいな。