坂倉準三 神奈川県立近代美術館鎌倉館 桂離宮を連想させる昭和の名建築
日本で最初にできた近代美術館である神奈川県立美術館鎌倉館は鎌倉の鶴岡八幡宮境内に建ちます。ル・コルビジェのところで学んだ坂倉順三が日本に帰り、コルビジェから学んだモダンな建築と日本の伝統的な構成を見事に融合した傑作。今月末にて美術館としての役目を終えるということで、見に行きました。平日にもかかわらず、多くの人達がなごりおしそうに、来館されていました。八幡宮からの借地権が切れるということで美術館としての役目は終えますが、建物は保存運動もありまだこの先どう使われていくかは未定だそうです。隣の新館は耐震性の問題もあり解体されますが、本館の方は何とか機能を変えながらも、人々に使われる建築として残していってほしいと思います。
池の上に張り出すように建つ白いキューブの建築。
当時コンクリートが主流のところを鉄骨造とすることで、大幅なコストと工事短縮を提案してコンペに勝利
外壁は特注アスベストボードとアルミ止め金具による千鳥の白い壁のキューブで
そのキューブを鉄骨の細い柱が支えるようなデザインです。
細い柱の部分は壁が後退しているので濃い影ができます。また中庭があるので、影の向こうに光が見えたりして、透明感も感じます。細い柱による建物の軽快な感じは日本の桂離宮を連想させます。
右側は解体される新館
展示は今週末までなので、行くことができる方は是非。屋根の部分は当時はトップライトがあり展示室は自然光により展示でしたが、その後ふさがれています。その時屋根部分にもう1枚外皮が加えられたので、屋根の笠木の部分が太くやややぼったくなりました。この写真は完成時のものなので、屋根の薄い軽快感が解ります。
日本的な池との調和を感じる軽快感のある建物
こちらは大きな樹木をくぐると少し地面が下がったところに白いキューブが現れるというエントランスアプローチ。
階段を昇り、上階が展示室になっています。正面の階段は、鎌倉鶴岡八幡宮の階段を連想させます。真ん中の鉄骨柱は赤とグレーに塗られ、象徴的な柱を感じます。階段奥の部分は中庭になっているので、そこからの光が階段を照らしています。とてもシンプルなんですが、この建物の顔の部分でもあり、その単純性の中に深い暗示が込められていると思いました。1階部分の壁は力強い大谷石。