村野藤吾 輸出繊維会館 動きのある曲線美を持つ階段

色鮮やかなガラスモザイクタイルのエントランスホールは、他ではないこの建物独自の芸術ですが、そのガラスモザイクの壁に負けない造形がこの階段ではないでしょうか。もうこれは村野さんしかできない階段だと思います。滑らかなカーブを描きながら流れる手すりが付き、まるで生き物のように軽快な動きがあります。階段は見上げた時のデザインが大切だと教わりましたが、この階段は見上げたところもよく考えて造られていて、信じがたいレベルの職人技も見られます。黒い段の縁取りと白い天井面が実にうまく取り合っています。直線階段ならともかく、これだけ複雑に曲がっているのに綺麗な納まり。うならせます。 1階のホールから降りてくるところ。ガラスモザイクの貼られた曲面壁と寄り添うようなカーブを持つ階段 地下1階の階段ホールです。 階段は更に下へと伸びていきます。ガラスモザイクタイルの壁は1階から地下へと続いており、その壁を分断することなく階段は浮いたような状態で、設置されています。意匠だけではなく構造もかなり試行錯誤を重ねたものだと思います。 生き物のような有機的な動きを感じる階段です。 一番下の段は床から浮いています。 軽快感を感じるのはこんなところのデザインの積み重ねなんです。 階段本体に付く手すりも軽快そのもの。 人の手に触れるところは、無垢の木ですが、どうしたらこのように曲がるように作れるのでしょうか。無垢を削りながら大工さんが合わせていったのでしょう。 ステンレスの手摺子と木手すり。木は曲がりませんから、この造作を大工さんの技量も素晴らしいものです。簡単そうに見えて、実は普通はできない技がここそこに見え隠れしています。 綺麗な階段の見上げ 壁と階段が離れているので、どちらも生きています。見れば見る程感心する階段でした。