京都泉涌寺の窯場で焼かれた泰山タイルが貼られた豪華で高貴な談話室 日本綿業倶楽部(綿業会館)
この日本綿業倶楽部(綿業会館)において、もっとも設計に力をかけて完成したのがこの談話室です。当初吹抜けではなかったものを、2層吹抜けの大空間にしました。ここの壁の一部に貼られたタイルは、京都で焼かれたもので、1枚1枚設計者である渡辺節が確認しながら貼られた力作
まずは、大きな吹抜けを眺めながらこの談話室にはいるわけですが、その入り口の扉廻りからして、ここは綿業会館の中でも特別な部屋だとわかります。
トラバーチンの石の壁にはめ込まれた木の開口部
扉を開けると大きな吹抜けが飛び込んできます。
左側には上階に登る階段が向こう側から伸びてきます。その美しい階段裏を見て正面から右へと視界が移ります。
右を見て、全体の落ち着いた雰囲気に息を飲みます。
人の頭高さぐらいまでの壁は木の装飾壁。その上はこれまた日本独特の渋い色をもつタイルの壁
右側には歴代綿業倶楽部の会長の自画像が並びます。そして高い天井
木で覆われた独立柱の向こう側一番奥の壁は、タペストリーのようにタイルが貼られた、演色された美しい壁面
壁面タイル壁の左には暖炉と煙突のこれまた凝った装飾造作が立ち上がります。
タイル壁の左の大きな開口部には、木の重厚な額縁と装飾が施され、この開口部とタイルタペストリーの壁、そして暖炉の部分がひとかたまりの重要な肝の部分として丁寧にデザインされています。談話室のコーナー部分をしっかり固めたデザイン
タイルタペストリーは京都の泉湧寺で焼かれたもので、色合いが日本。そして深みが感じられる奥が深いタイルです。
さて、ふりかえりまして全体を見ますと、この大きな談話室にもうひとつ動きと特徴をもたらす階段が見えます。
この階段は、柱が無く、壁から持ち出されて支持されたもので設計者渡辺節の優れたデザイン力をここでも見ることができます。
上の階へと昇っていく階段は、静かな空間に流れを生み出しています。
ここに座ってしばし時間を忘れたい。そんな衝動にかられる設計者の注がれたエネルギーが感じられる落ち着いた談話室でした。