旧国立公衆衛生院 港区立郷土歴史館「ゆかしの杜」 ネオゴシック建築
白金台にある、旧国立公衆衛生院の建物が、改修を終えて港区郷土歴史館「ゆかしの杜」として生まれ変わりました。
外から一目みてわかる垂直方向を強調した、スクラッチタイルをまとったデザインは、東京大学の校舎を多く手掛けた建築家内田祥三氏の設計。
外壁はスクラッチタイル。このタイルは製造するときにタイルの鏡面を釘状のもので、何本も線を刻みこんだもので、光が当たるとその掘り込んだラインに影ができて、深みのある表情を見せてくれます。
もともとは、フランクロイドライトの設計した旧帝国ホテルで最初に使われたもので、その後多くの建築に用いられています。
構造は鉄骨鉄筋コンクリート造で地下1階、地上6階建て。竣工は1940年(昭和15年)
この建物が壊されず、改修・構造補強されて、新しく郷土歴史館として使われていることに感動。最近は近代建築など優れた建築遺産がことごとく壊されていく中で、よく残して再生の道を選んだなと思います。みんなこうして歴史ある建築を使いながら残してほしいものです。
正面外観
まったくの対称形の堂々たる外観
真ん中のエントランス部分を挟んで両側の棟がせり出してきます。囲まれた庭と正面の2つのそびえる塔も印象に残る力ある外観デザイン
玄関部分の石の連続するアーチも良いですね。陰影ができて深みあるデザイン
柱は、外壁よりも外に出ていて、屋根に近いところにはより垂直性を感じさせる装飾デザインがなされています。
柱の装飾は、屋上水平ラインからさらに空に向かって飛び出しています。
大きな構造柱の間に小さな垂直方向の飛び出しがあり、その間にサッシがはめ込まれています。
サッシももちろん縦長。
垂直性を強調したゴシック建築。その方向性を採りいれた内田ゴシックと呼ばれるデザインです。
こちらは、サブエントランス。外壁もよく見ると、上へ上へと意識を向けさせる矢印のようなデザインが盛り込まれています。
飛び出した石のアーチレリーフとスペイン瓦の屋根がなかなか良いです。
屋上からの縦樋も頂部の装飾の途中から出していて、垂直性を乱さないように配慮