解体が決まった建築家菊竹清訓の都城市民会館 ゼラチンシルバーセッション
東京六本木ミッドタウンの中にあるフジフィルムスクエアで開催中の写真展「ゼラチンシルバーセッション」を覗いてみました。
その中で建築家菊竹清訓が設計した旧都城市民会館の写真が、写真家中道淳氏によって捉えられていました。
この都城体育館の保存に関しては、建築団体からのおおくの保存に向けた案が市に提出され、この建築の価値を訴えてきたのにも拘らず、
残念なことに解体が決定。
杭を集中して施工し、工事費用を抑えるため屋根のトラスを集め、このような扇形の建築になったそうです。
もちろん、デザイン的にもサザエ貝やヤマアラシにも似ていることから、非常に特徴的な外観。空調も形態に沿わした設計を行っていて、
機能もデザインも合致した建築家菊竹清訓の秀作です。
一度は南九州大学の講堂として利用するため、無償に貸与されましたが、使うことなく市に返還。
取り壊しと決まってからも、その建築の持つ歴史性からユネスコの諮問機関国際記念物遺跡会議から解体中止の勧告文書が出されました。
建築学会からも、その保存を求めて、民間に対してもいろいろな提案やコストが出され、民間企業からの活用提案を模索しましたが、それも無く
結局市民アンケートでも解体賛成票が8割を超えたため、解体される方向に。
確かに雨は漏っているだろうし、断熱や環境の面、景観論からも外れている。そして維持コストももちろんかかる。
でも、メタボリズムという時代の先駆者の建築であり、歴史に残る建築。こんな建物これから日本には現れないよ、きっと。
何だかこの国の建築に対する文化レベルの寂しさを感じるような出来事で、ちょっと悔しいね。