国立能楽堂(1) 建築家大江宏の代表作
千駄ヶ谷の駅から歩くこと5分。
近くを高速道路が通っているとは思えない閑静な場所に国立能楽堂は建っています。
建物が完成したのが1983年。設計は建築家大江宏
敷地は十分に広くない事、廻りが住宅街であることから、建物を住宅スケールに同調させるようにし、
動線的にも視覚的にも対角線を主軸に考えたそうです。敷地の対角線に沿ってアプローチがつくられ、
その対角線の一番奥に能舞台があるという平面計画になっています。武蔵野をイメージして造られた
中庭は、その動線を造り出すために設けられています。
1階平面図
正門から玄関方向を見る。対角線が生かされていて、アプローチが長い。
屋根は、寄棟屋根が幾重にも重なった形式。
この屋根の仕上げは、雨に対してまず長尺ステンレス瓦棒引きで対処し、その上に化粧としての軽金属のパイプを取り付けています。
金属パイプは、3段階の色むらを付けた自然発色させたもので、重ねあった屋根の美しい稜線を見てとれます。
屋根伏せ図
大江さんは、建物を考える時、プランよりも屋根から考えると言われていたそうですが、この国立能楽堂の屋根伏せを見ると、いかに考え抜いたか想像できます。
さて、内部へと。
玄関広間。木の架構の向こう側に中庭が控えます。
整然と造られた木造架構。
実は、建物自体は、鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造で、木の架構自体には耐力が架かっているわけではありません。
大江さんは、今までの近代建築に何が足らないかと追及してきて、化粧と野物の意識というものが欠落していると感じ取り、
「混在併存」という考え方をとっていますが、この国立能楽堂ではその化粧と野物をシステマチックに並立させて成立させた作品と言えます。
玄関広間の天井の木架構
天井の高い、多くの人を導きいれる空間です。
そこから、一機に天井の低い渡りへ。
渡りの奥から、玄関広間を見返す。
渡りを進むと、壁にぶつかります。
この壁にはタイルが貼られていて、強力なアイストップに。
この壁の左手に、広縁が続きます。
この広縁の左手が中庭。右手が広間です。
広間も独特の日本的な雰囲気
天井が高く、ハイサイドから光が入ってくるような演出も見事です。