鉄平石の壁と床 木天井で囲まれ 中庭を見ながら進む玄関アプローチ
私が設計する建物で、一番の肝と思い考えるのが外と内の接する場所です。特に外から帰ってきて、中へと入る部分には時間をかけて案を練ります。敷地が小さくなかなかそんなスペースを取れない場合でもちょっとしたバッファーゾーンを作ることで、気持ちが入れ替わると考えるからです。私が小さい時は、家にはガラガラと引き込む戸が道路に面して付いていて、そこから家の敷地を数歩歩いて玄関扉という家がほとんどでした。これもやはり外と内のバッファーゾーンを自然に考えた昔の人の知恵だったと思います。漫画さざえさんの絵にもこんなシーンがありますよね。
ということで本郷の家もそこのところは、頭をひねりました。
玄関ドアを開けて進みます。床は壁と同じ鉄平石。玄関ドアのところが結界となるので、床の鉄平石の貼り方も変えています。
一歩入りますと、鉄平石の壁と床、そして木の天井で囲まれた洞窟のような空間
右には収納があり、その向こうにはベンチを設けました。
買い物から帰ってきたときの一時置き場にもなりますし、中庭での庭いじりの際の休み処にもなります。
床の鉄平石は、曲面の壁の中心に合わせながら貼っています。目地と石の大きさを何度も検討し、試行錯誤して完成したもの。
曲面の石の壁に沿って進みますと、外壁に放たれた円形の開口部が見えてきます。
ここにはルーバーが入っていて、外から見えにくい構造とし、中庭へは風の通り道を作ります。真夏にこのルーバー開口の前に立ちますと、道路からこの中庭に風が抜けていくのが解ります。
ルーバーは、スチール亜鉛メッキにリン酸亜鉛処理したもの。半円形の枠に対して内側に勾配を持つフラットバーのスチールルーバーを溶接で接合しています。簡単に見えそうで、実はかなり熟練した金物屋さんお仕事。
更に進むと左手に中庭。
大きなもみじを中心にして、季節により花が咲く様々な種類の草木が植えられています。左手前には散水栓を設置。水が落ちる部分は石を敷いています。
そして振り返ると鉄平石の壁。2階の壁の高さまであるので迫力があります。
光が注ぎますと陰影が綺麗。
外部から遮断された中庭なんですが、石と木と塗り壁という自然素材に囲まれており、落ち着きのある静かな場を作り出すことができました。