文京区本郷の家 石貼りの外壁と木ルーバーを持つ外観
フランクロイドライトのヘーガン邸(ケンタックノブ)は、石積みされた壁の上に木造の壁、庇のある大きな屋根が載る建物ですが、こんな石と木で組み立てられ、緑も感じられる心からリラックスできて気持ちの良い家に住みたいというオーナーの希望からこのプロジェクトはスタートしました。
大自然の中に大地から生まれたような有機的な建築がライトの一時代のスタイルですが、東京でそんな大自然を求められるところは無く、敷地にも限りがある中で、どうやって町の喧騒から逃れ、静かで落ち着いた家を作るか考えた結果、中庭を囲んだ都市型住宅という形に辿り着きました。
敷地は2つの道路に接する角地。
この角地を柔らかく囲むように石と左官壁の外壁が廻っていきます。
建物はコンクリート造。断熱性能を高める為、外断熱工法としています。
1階廻りは車からがっちり守るという機能を踏まえ、歩いている人や街に対しては自然素材の力強さと趣が出るように鉄平石による石積としました。
中庭や2階居室への風の抜けを考慮しながら、プライバシーを確保するため、木のルーバーが曲面壁に沿うように配置されています。
建物は3階建てですが、3階部分がセットバックしているので、街に対して圧迫感はありません。
来訪者は、この石の壁を見ながらその壁に沿うように廻りこみます。
開口部のサッシは断熱性能に優れた木製サッシ
そしてこちらが玄関の見えるエントランス部分。
手前左のところは自転車置き場。
ピロティーの下には車が1台収納できます。
石の上の壁は、コンクリートの上に50mmの断熱材を貼り、その上にメッシュ処理した下地をつくり、仕上げに左官コテ仕上げとしています。コンクリート、断熱材の収縮に対応するため仕上げの塗り材は弾性があるものを用い、経年変化によるクラックが目立ちにくい処理を施しました。
石積みも左官の仕上げも職人さんの腕の良し悪しがそのまま仕上げとして出るものなので、腕の良い職人さんに来てもらい、無事仕上げることができました。
いつも設計して思うのは、建物は経年変化を楽しめるものであり、年を重ねるごとに味わいが出るものにしたいということです。できた時が一番綺麗という建物とは真逆。
この建物も時と共に汚れ、石の部分には苔とかが生えて、よりしっくり見えるようになると思います。
あたかも前からここに建っていたかのような建物という感じです。