ウエスティン都ホテル 佳水園 村野藤吾の現代数寄屋建築
長年行ってみたかった京都都ホテルの別邸佳水園に行きました。
建築家村野藤吾のモダン数寄屋の代表作の一つで、1959年の作。
まずは、ホテル本館の7階までEVで上がり、そこからアプローチを歩いて、門に辿り着きます。ここまでくると、近代的ホテルの印象は頭から消えて、静かな和の世界に導かれています。
やや重厚な檜皮葺の門
石の階段があり、その先には軽快な数寄屋建築の屋根が見えます。
少し進むと、右手には石の庭。この庭は元々喜寿庵と呼ばれた別荘の庭として小川白楊により造られたもの。自然の岩盤をそのまま生かしたお庭で、コケや松を所々に植え、石の岩盤の中に2つの水の流れを作り出しました。水は、琵琶湖からの疎水を用いています。石を得意とした小川白楊の遺作でもあります。その岩盤の庭に溶け込むように建物はさりげなく置かれています。
玄関内部
床は黒い石。右手は、下部より足元に光を採り入れる低い窓。そこには広い幅で白い石が敷かれ、光をランダムに反射させています。
石の框が廻りますが、低い手すりが設けられることで、方向性が生まれ視線は正面へと注がれます。その正面には上下が空いたパーテション。床と天井が向こう側に繋がることで、広さを感じさせながらも視線は自ずと光の射す右側へと移っていきます。パーテションの向こう側の天井も左はフラットで右は勾配天井となっており、この屋根勾配を変えた納まりは、以前は茶室で使われていた技法。その技法をホテルのロビーにまで持ち込んだのは村野さんが最初と言われます。
重心が低く、視界が水平方向に伸びてゆく。広さの中に方向背を持たせ、訪れたれた人の気持ちを高ぶらせる。素晴らしいアプローチです。