鉄平石の壁 木の天井 カリンの床 木製サッシで囲まれた落ち着くダイニング
このリビング・ダイニングをどのようにデザインするかが、一番のテーマでした。中庭の緑はいつも目に入るようにしたいし、鉄平石の強く厚い壁に守られるように過ごしたい。石は地球の一部なので見ていても、触っていてもどこか落ち着きます。石は最初からのテーマでしたが、どのような石をどう積み上げて空間を作るかは試行錯誤の連続でした。住宅のスケールでどの程度の石の大きさが良いのか。石は積みあげる感じが好きなので、ひとつひとつを積み上げて仕上げるということが決まり、できるだけ日本の石で積み上げたいということになり、最終的には玄関の門などで昔から使われている鉄平石にたどりついたわけです。その鉄平石も一番人の手の痕跡が残り、見た目も力があり、色合いも良い自然石を小端で積むという方法にしました。今まで見た建築の中でやはり印象に残るのはフランクロイドライトの落水荘の石張り。落水荘は地元でとれる石を積んでいて、ランダムながら水平ラインがそろっています。大地に対して浮く水平ラインを強調した建築なので、その石積みもあくまで水平ラインを大切にしています。
これは落水荘のゲストハウスのリビング。家具も水平を強調してますよね。
これは落水荘のダイニング。石の壁はそのまま階段の壁になって続いていきます。
もともと川の上の石の岩盤に乗る建物なので、まさに自然とひとつになった建築なんです。
落水荘の水平を強調した壁は今回の建物コンセプトには当てはまりませんが、心地よいヒューマンスケールと外部へ向けての方向性がほしいのである程度水平ラインがわかるようにしようと思いました。形がバラバラな大小の自然石を積んだその間にいくつかのまっすぐなスレート石(既成の大きさに割った汎用性の高い鉄平石)を入れていきました。自然石の方は規格サイズがないので、図面は書けません。そこで現場で職人さんとどうだこうだ言いながら仕上げていきました。
リビングの木製サッシからダイニングの木製サッシまで石の水平ラインに沿ってひとつに空間がつながるようなイメージです。
中庭にドーンと立ち上がった2層分の石の壁がそのまま木製サッシをまたいで内部にまで貫通しています。その壁はダイニングまで伸びていて、壁と壁の間にキッチンの入り口があるというデザイン。
ダイニングの上にだけ木の天井を設けています。一つの大きなリビングダイニングとして白い珪藻土の天井にするというのも一つの解答ですが、ここはダイニングテーブルに座った感じを大切にしました。リビングとダイニングで座った感じを変える。そしてダイニング部分は天井を低くして、より親密に話ができるようにする。そんな意図があります。
右の階段は3階に上る階段ですが、その先の壁には開口部が設けられています。朝食時は、東に設けたその開口部から光が壁に沿ってダイニングにまで届くようにしました。階段とダイニングの間は、階段状の展示ケース付き収納。階段下も有効に収納として使えるように配慮しています。
床のフローリングはカリン材。いまでは貴重な材です。固く赤褐色の色が何とも言えない魅力ある材料。今回は岡山の材木屋さんに絶大な協力をしてもらってカリン材を集めました。蓄熱式床暖房を採り入れたシステムなんですが、このカリンフローリングは無垢でその床暖房にも対応するようになっています。
木と石そしてステンドグラスにガラスペンダント照明。徳力竜生ワールドのダイニングです。