白井晟一 杉浦邸 2方向に分かれる結界としての玄関
杉浦邸玄関も非常に重要な場所です。やはりここで、一旦内部には入るけれども、まだ完全なプライベートスペースではない、一つの緩衝帯のような場所でした。沢山の見学者がおられたので、ゆっくり見れませんでしたが、改めて写真で振り返ると凄い空間です。杉浦邸の玄関扉はまず、外部と内部の結界。ここで、床の石の仕様が変わります。重厚な御影石から黒い玄昌石へ。
玄関扉の右側には、エントランスアプローチから見えた横格子の入ったあかり採りの窓があります。障子が入り、柔らかい光をこの玄関ホールにもたらします。
あかり採りの窓の上には天井から吊られたろうそく台のような照明が付きます。
天井の仕上げも面白い
正面には、上がり框
床が出ていまして、その向こうに壁。先が見えません。ここが居住者の出入り口で、折れ曲がって進みますとリビングになります。
照明そして床の間のような象徴的な柱のある壁
内部ではない外部と連続したようなしつらえ。
左を見ますと、もうひとつ別の上りがあります。
その框板の左は、下足収納。その収納のさらに左はトイレの扉です。
これだけの小さな玄関スペースに設計者白井晟一の設計魂を見たような気がします。
奥のお茶室からの光が見えて、遠近感が感じられます。
天井から縦格子が壁の脇に付けられていて、空間に奥行きを生み出しています。
下足収納の上の壁に付く照明は、シンメトリーで、この場の強さを主張しています。
そしてこれが、茶室方向に上がる框板。ちょうな仕上げの1枚板です。
やはり、ここから先は、日常の生活とは異なる特別な空間であることを表しています。
床と壁と仕上げ材との取り合いも見事です。
杉浦邸の1階平面図です。右下が玄関です。玄関を入りますと、図面上のリビングに入るのに、小さな前室空間を設けています。この前室のために、玄関からリビングは壁に隠れて見えません。いきなりプライベートな空間に入るのではなく、玄関ホールそして小さな前室を抜けて初めてプライベートな部分に至る。神社でもそうですが、日本の伝統的な建物を見ますとと、いくつかの結界を経て、本棟にはいりますが、その住宅版とでも言うのでしょうか。
玄関左の茶室に至るルートも同じように、いくつかの結界の先に茶室があるように設計されています。
やはり、このあたりの考え方が肝ですかね。