アパートメント鶉(ジュン) 環境を第一に考えた集合住宅
都心で集合住宅を考えるとき、建築主の要望は、いかに沢山部屋をとり、面積も基準法一杯にして、無駄なく稼げるかを最重要課題とします。
そして我々建築家も、そこの経済性は当たり前のように考えて、デザインするわけですが、本当のところは都心だからこそ、多くの緑を配した自然ゆたかな環境を創りたいところ。
そんな理想を実現したのが、アパートメント鶉です。敷地1400平米のお屋敷跡に建つアパートメント鶉は、基準法の容積率は使い切っておらず、面積はあまっています。もっと部屋数も増やせるところをそのようにしないで、その代わりに緑豊かな環境を創りだしました。
確かに部屋数が多いことで最初は家賃収入も沢山入りますが、時が経つにつれて汚れや古さが目立ち、賃料は下がってきます。
ところがこのアパートメント鶉では賃料は高めですが、その賃料も年と共に上がっています。木々も成長して豊かな環境を創りだし、その環境に惹かれて
このアパートメントはいつも満杯。時代も反映していますが、これからはこのような環境重視建築がもっと求められると思います。
そこにはオーナーと建築家の強い想いが必要です。
さて、狭い道路を歩いていますと、土色の建築群が現れます。
各住戸は、それぞれ入口がありますが、こちらがメインのゲート
建物のピロティー状のこの入口がこのアパートメントを語るすべてと言っても良い感じ。
ここから住民は入るのですが、門がありません。したがって住民以外も自由に通り抜けができます。セキュリティー重視の昨今の考え方とは真逆。
中にはギャラリーが入っていて、そのギャラリーを見たり、利用する人も中に入ってきます。逆に多くの目があることで安全であるという発想
このゲートをくぐりますと、緑豊かな別世界が現れます。
このゲートは、奥に行くほど狭くなっていて、より遠近感を出すように設計されています。
石の床とその奥に拡がる庭の床高さでは、数段手前の床が高いので、庭を見下ろす感じ。ここはミソですね。
通路がまっすぐ通り、いくつかの分棟配置の建物をパースペクティブに感じながら、そのアイストップには必ず樹木が座ります。
左の建物がギャラリーです。ベンチもあって池が眺められます。
この通路の左にはビオトープ。
設計者の泉氏のコンセプトではこの池に蛍を舞わせるという事でした。
幼虫を放し、3年ぐらいは、蛍が舞って、地域の人達も含めて蛍の会を催したそうです。
何と豊かなことでしょう。
残念ながら、樹木の殺虫剤等の為か今は見られないようですが、雨水を受けてそれを浄化して回遊させてこの池に注いでいるそうです。
勿論、大雨の時のオーバーフローも検討済み。
手前に池があって、塀の前にも植栽。塀の向こう側にも緑が見えて、やっと建物の外壁となっています。
池と緑や塀が、積層しながら見えることで、奥行を感じることができます。