村野藤吾 名古屋丸栄百貨店 垂直マリオンと装飾タイルのファサード
名古屋の中心的繁華街栄にある老舗百貨店。戦争で建設途中になっていたものを村野藤吾が増改築を施したもの。北面と東面は水平スラブと縦マリオンのシンプルでリズミカルなファサード。西面は、大きな壁に小口タイルやガラスブロックを組み合わせた装飾壁となっています。
階毎に水平に強調されるスラブのラインと縦に細いピッチで入るマリオン(方立)開口部はスモークのガラスブロック。ガラス部分は掘り下げ、より陰影を出すことに寄って一見シンプルに見える壁面に深みを持たせています。水平ラインも少し壁面から出すことで、スラブ下に影を作り、水平ラインも認識させます。壁は紫色の小口タイル。シンプルな壁面ほどプロポーションが大切ですが、このファサードの横と縦の関係、細かなディテールは参考になります。
西面は大きな壁面に対し細かな開口部を排しながらも印象に残る装飾的なタイル壁面
北面での水平ラインのスラブを大きな壁面から少し出すことで、リズムをとり、スラブ間の壁面に緑系統のタイルを主体とした絵を描いています。村野さんはよく着物の柄を眺めていたということで、日本的な動きのある絵、散りばめられた文様と、眺めていていろいろ想像すると面白いし不思議な壁です。
今の建物ではこのような装飾壁面は美術館を除いては見受けません。そもそも大きな壁面ができると言って美術館ではないので、そこに絵を描くという発想はなかなかないのです。しいて言えば映像によるデジタル画面がくっついた建物が今の装飾建築なんでしょうが、栄という繁華街の中心に人の心が和む絵を大胆に描いた村野さんの遊び心と発想の偉大さを感じます。これも製作はタイル職人の技なわけで、ひとつひとつ図面を見ながら貼っていったその努力にも乾杯!
内部階段の手すりはやはり流れるような有機的デザインでした。